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オリンピック東京2020大会は7月24日開催! 命に係わる夏に行う理由が酷い…

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東京オリンピック2020大会の開会までついに1年を切りました。街には五輪のポスターやグッズが増え、チケットの追加抽選が行われることも決まって、なんだかんだと盛り上がりつつあります。しかし熱中症対策はいまだ十分とはいえません。なぜ前回の東京五輪と同様に10月開催にせず、わざわざ一番熱中症患者が増える夏に開催するのでしょうか。

2020年東京オリンピック・パラリンピック開幕まであと1年

引用元:https://www.photo-ac.com/

東京オリンピック(TOKYO2020大会)は、2020年7月24日~8月9日にかけて行われる予定です(同パラリンピックは2020年8月25日~9月6日)。ついに開会まで1年を切りましたね。国や都は熱中症対策に力を入れています。

日本に長年住んでいる生粋の日本人ですら熱中症で倒れます。亡くなる方も少なくありません。しかも子供や高齢者に限らず、熱中症を発症した条件次第では平均以上に体力がある方ですら命に危険が及びます。

まして日本の夏に慣れていない外国の選手や観光客はどうなるでしょうか。はっきり言って想像するのも恐ろしいです。万が一アスリートが大勢亡くなったり、命は助かっても選手生命が絶たれたりしたら、国際問題に発展しかねません。

大会期間中は東京全体が大混雑します。2019年7月に交通規制実験が2回行われましたが、案の定渋滞が発生しました。オリンピックが始まれば公共交通機関にも人が溢れます。観光客の熱中症も心配ですが、日本人も例年より発症する危険性が高まります。さらに混雑と患者激増のせいで救急搬送や処置にも支障がでることは想像に難くありません。

東京でオリンピックが開かれるのは今回で2回目です。前回は日本の地理的条件・気象条件を考慮して10月開催でした。なぜ50年以上たって温暖化やヒートアイランド現象が進んだ今の東京で、死の危険があるにもかかわらず夏開催することになったのでしょうか。

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なぜ10月ではなく8月にオリンピックを行うの?

引用元:https://pixabay.com/ja/

2019年も7月末に梅雨明け宣言が出された途端、急激に気温が上昇し、夏日・真夏日が連日続いています。東京が五輪開催地に選ばれたときからずっと言われ続けていることですが、起床時刻ですら気温が30℃を超えている日がザラにある夏の日本でオリンピック大会を開くのは自殺行為です。

夏の東京の不快指数は世界トップクラス

日本の夏は高温多湿で、不快指数が非常に高くなる特徴があります。海に囲まれた山の多い島国という土地柄仕方のないことですが、同様の地理的条件の土地より過ごしづらいといわれるのは、東京が高度に開発されているからです。

東京をはじめとする日本の都市部は、街全体がコンクリートで覆われ、高層ビルによって風が妨げられ、エアコンの排熱の逃げ場がなくなることで、年々ヒートアイランド現象が悪化しています。地球温暖化の影響以上に、人の手による都市化の影響が大きいのです。

昨年「不快指数ってなに? 温度と湿度の関係を理解して過ごしやすい環境を作ろう」という記事で詳しく解説しましたが、湿度が高いほど体感温度や不快指数が高まります。

世界的には不快指数が75を超えると不快になる人が増え始め、80になるとほぼ全員が「蒸し暑くて不快」だと感じるそうです。

引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/不快指数

そして上の表からわかる通り、東京の夏はほぼ毎日のように不快指数75を超えます。例えばこの記事を書いている2019年7月31日15時の東京都渋谷区は気温34℃・湿度57%なので、不快指数はおよそ84~85程度です。朝晩に気温が30℃以下まで下がっても湿度は80%を超えるので、不快指数は終日80以上という計算になります。

世界中の人が暑いけれど耐えられるのが緑色のマス、日本人など慣れている人なら耐えられるのが白いマス、オレンジ色は世界基準でほぼ全員が不快になるマス、赤色は日本人でもほぼ全員が不快になるマスです。2010年代の東京の7月・8月は、極端に涼しい日以外はずっとオレンジ・赤・濃い赤に該当していたといっても過言ではありません。

1964年の東京オリンピックは10月開催

引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/三種の神器_(電化製品)

暑すぎ注意! 1970年代・90年代の夏と2010年代の夏の気温を比較してみた」という記事で、昔と今の気温の違いを比較しました。70年代から2010年代までの40年で平均して2℃以上暑くなっていることがわかりました。

記事冒頭にも書きましたが、前回の東京オリンピックは1964年10月に開催されました。ハッピーマンデー法以前の「体育の日」が10月10日だったのは、五輪の開会式が行われた記念日だからです。

当時の日本は高度経済成長期の真っ最中。学生時代、家電の「三種の神器」や「3C」について習ったと思います。60年代に普及した「3C」とは「カラーテレビ・クーラー・自動車」をさします。庶民がカラーテレビをこぞって購入したきっかけは64年の東京オリンピックを見るためでした。クーラー(冷房機能のみのエアコン)の普及はカラーテレビより遅かった(後回しにされた)そうです。

今より自家用車やエアコンがずっと少なく、東京全体がコンクリート・アスファルトで覆われていたわけでもなく、高層ビルも少なかった当時ですら夏開催は避けられました。高温多湿だけでなく台風直撃を避ける意図もあったとはいえ、まっとうな判断です。

2018年の東京の平均気温は19.1℃、平均湿度は74%でした。湿度が75%の場合、気温が25℃でも不快指数は74になるので10月開催というのは理にかなっていますね。ではなぜ前回より確実に暑くなっている2020年大会が7月~8月に開催されるのでしょうか?

アメリカとの時差とTV中継に忖度した結果

引用元:https://www.photo-ac.com/

結論からいうと、アメリカでのTV中継に忖度したからです。

日本とアメリカには14~17時間もの時差があります。サマータイムを含めると、東部時間(ニューヨーク)とは13時間、中部時間(シカゴ)とは14時間、太平洋時間(ロサンゼルス)とは16時間の差です。

日本の午前=アメリカの前日夕方

日本の時刻が8月1日午前9時なら、ロサンゼルスの時刻は7月31日午後5時(17時)ということです。午前中の競技は前日夕方に中継され、午後~夕方の競技は深夜帯に中継されることになります。

サマータイムは3月~11月に導入されるので、8月でも10月でもこの時差は変わりません。日本の競技を生中継するならアメリカでは絶対に夕方~深夜帯(明け方)になります。一番暑い時間帯を避けると早朝と夕方以降になるので、アメリカでは夕方と早朝以降です。TV観戦するにはいい時間帯といえますね。

IOCはTVの莫大な中継料を手放したくない

ではなぜ10月ではいけなかったのか。実はIOC(国際オリンピック委員会)が、オリンピック開催に立候補する場合、開催期間を「7月15日~8月31日」におさめるように通達しているからです。絶対のルールではありませんが、期間から外れたら開催地に選ばれることはないでしょう。

7月・8月開催がIOCによって推奨されている理由は、世界中で人気の高いスポーツのクライマックスが秋だからです。夏はスポーツの閑散期です。逆に10月はサッカー・野球・アメフトなど多くのスポーツが最も盛り上がります。日本でもプロ野球のリーグ戦が終わるのは9月~10月、日本一を決めるのは10月~11月ですよね。

オリンピックを秋に開催しても、多くのTV局は4年に1度だけの大会より、毎年のお得意様である各種スポーツを優先することは想像に難くありません。放映権が売れないということはIOCが潤わないということです。どんなにきれいごとを並べても結局はお金ということです…。

ヨーロッパ各国との時差は約7時間。早朝の競技は深夜、夕方以降の競技は午前中に放映されます。生中継にむいている時間設定ではありません。ヨーロッパで行われるスポーツ中継とは被りません。

というわけで日本が忖度しなくてはならなかった相手はアメリカのTV局(とそこからの莫大な収益を期待している人々)なのです。

人命を守るために熱中症対策は必須!

立候補したJOCと東京を選んだIOCは大金に目がくらんで人命を軽視していると言われても仕方がない状態です。そもそもIOCが「夏開催」を推奨している以上、日本の都市は立候補すべきではなかったと筆者は考えます。

ともあれオリンピック開幕が目前に迫っていて今更中止するのも現実的ではないので、可及的速やかに熱中症対策を進める必要があります。次回の記事では、東京都が猛プッシュしている「被る日傘」「空調服」をご紹介します。

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VENGA編集部
VENGA編集部です。コンプレックスを持つ女性に寄り添う記事をお届けします。

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