不快指数ってなに? 温度と湿度の関係を理解して過ごしやすい環境を作ろう
日本の夏に根性論を持ち出すべきではない!
2018年7月20日現在、以下のツイートがバズっています。
今日の管理職と養護教諭の会話。
— らいふ先生 (@life_jhs) July 18, 2018
養護「校長先生!気温が41℃です!」
校長「それはいけない、部活動を中止して下校させましょう」
教頭「いや、まだ湿度は低いですよ!?」
校長「じゃあ小休憩を指示しましょう」
冗談のような本当の話。この人達はどこのラインで闘ってるの?狂ってるとしか言えない
今日の管理職と養護教諭の会話。
養護「校長先生!気温が41℃です!」
校長「それはいけない、部活動を中止して下校させましょう」
教頭「いや、まだ湿度は低いですよ!?」
校長「じゃあ小休憩を指示しましょう」(Twitterより)
元ツイートは7月18日に呟かれたものですが、筆者は今朝の通勤電車内で見て、「かりにも大学を出ているいい歳した大人がなぜこんなに無能なのか。教員免許をはく奪すべきだ」と思いました。
実際の気温と体感温度は異なります。湿度が低いほど体感温度は低く、湿度が高いと体感温度も高まります。赤道直下のエジプトより日本の盆地のほうが暑いと言われるのは、湿度が高いせいで実際の気温よりもはるかに蒸し暑く感じるからです。
上のツイートに話を戻しましょう。まず常識的に考えて41℃で部活を続行しようというのが正気の沙汰ではありません。日本体育協会は、31℃以上では激しい運動は中止、35℃以上は運動は原則中止すべきとしています。周知も法律化もされていないので誰も守っていないだけです。
それ以上にまずいのは教頭の認識の甘さです。確かに湿度が低ければ過ごしやすいのは事実ですが、気温が高いほど空気が含める水蒸気の量(飽和水蒸気量)は多くなるので、相対的に湿度が低くなるだけで、少しでも気温が下がれば湿度は一気に上がります。そもそも日本の夏に「湿度が低い」状態なんてありえません。
根性論が人の命を奪います。自分の命は自分で守るために、気温と湿度、不快指数についておさらいしておきましょう。
「湿度」とは?
湿度とは、大気に含まれる水分(水蒸気)量の割合のことです。
水は蒸発すると水蒸気になります。大気(空気)が含める水蒸気量の上限は気温ごとに決まっていて、「飽和水蒸気量」といいます。1立方メートルあたりに何グラムの水蒸気を含めるか(g/m^3)で表現します。
湿度=実際の水蒸気量÷飽和水蒸気量×100(%)
各気温ごとの飽和水蒸気量を100とし、それに対して実際に計測したときに空気中に含まれている水蒸気量が何%か、というのが湿度です。
例えば気温30℃の飽和水蒸気量は30.3g/m^3です。もし空気中の水蒸気量が15.15g/m^3なら、湿度は50%です。水蒸気量が20g/m^3なら湿度約66%、25g/m^3で湿度約82%になります。
朝は湿度が低く昼は高いが水蒸気量はほぼ同じ
逆に湿度から空気中の水蒸気量を求めることもできます。2018年7月20日17:00の世田谷区は、気温32℃/湿度62%です。32℃の飽和水蒸気量は33.82g/m^3なので、17時の世田谷の空気には1立方メートルあたり約20.9グラムの水蒸気が含まれているということになります。
朝の5時の時点では気温27℃/湿度83%でした。27℃の飽和水蒸気量は25.78g/m^3。計算すると約21.4グラムの水蒸気を含んでいたようです。気温は5℃違いますが、空中の水蒸気量はあまり差がなく、湿度には大きな差が生まれました。
飽和水蒸気量(湿度100%)は急激に増える
気温が高くなるほど飽和水蒸気量、つまり湿度100%のときの水蒸気量は増えます。気温に比例するのではなく、加速度的にぐい~んと増えます。これは夕立や不快指数に関わってきます。
不快指数とは?「高温」よりも「多湿」が不快!
夏になると天気予報で「不快指数」の予測を耳にすることがあります。不快指数とは夏の蒸し暑さの度合いを表す数値で、世界中の多くの国々で用いられています。
ヒトは汗をかいて気化熱を奪うことで体温を下げます。ヒトという動物が他の哺乳類に比べて暑さに強く、持久力に優れているのは、全身の皮膚に汗腺があって体温調節能力が高いからです。
不快指数は気温と湿度を用いて計算します。同じ気温でも湿度が高いほど不快感が強くなります。湿度が高いということは空気中の水蒸気量が多く、汗が乾きにくい状態です。「高温」よりも「多湿」の方が身体にダメージを与え、蒸し暑く不快に感じます。
計算式はややこしいので省きますが、一般的に不快指数75以上になると「蒸し暑くて不快」な人が出始めます。80を超えるとほぼ全員が不快になります。
日本人は高温多湿な環境になれているため世界の標準より高めの不快指数に耐えられます。不快になる人が出始めるのは不快指数77で、85になると93%の人が不快に感じるとされています。(やはり日本で夏のオリンピックをするのは無茶ですよね……)
風が吹かない日本の都市部では不快感が減らない
不快指数が上がると不快に感じる人の割合が多くなります。不快感とは体感の問題なので、風が吹くと不快な気分の人は減ります。そして残念ながら日本の都市部はあまり風が吹きません。むしろモワッと熱い排気ガスを浴びると怠くなります。
夏の日本に「湿度が低い」状態はない
上の図は、気温と湿度から求められる不快指数の表です。
2018年7月20日現在、東京に限らず全国で最高気温が30℃以上の真夏日や、35℃以上の猛暑日が続いています。30℃の行を見ると、湿度35%で不快指数75、湿度50%で不快指数77です。35℃なら湿度5%で不快指数75、湿度15%で不快指数77。
日本は島国です。周囲を海に囲まれているので夏場は湿度が非常に高くなります。日本海側と太平洋側で降水量の多い季節は違いますが、1年を通じて雨量が多めの「温暖湿潤気候」「亜寒帯湿潤気候」にほとんどの土地が含まれます。
東京の場合、1年を通じての平均湿度は60~70%です。都市部は水分を多く含む樹木や土が少ないので湿度も低めです。全国平均はもっと高いでしょう。「乾燥している」と言われる冬ですら平均すれば湿度50%を超えています。夏だけなら75%を超えるのが当たり前です。
つまり日本の夏に「湿度が低い日」なんてものはありません。そして気温が41℃ならたとえ湿度が0%であっても、不快指数は79です。一番上で批判した教頭は、日本が高温多湿な国であるという基本的なことすら理解できていないと言わざるを得ません。
「不快」「不快指数」という感覚的な言葉が原因で根性論が生まれているのかもしれません。不快指数が高くなると「不快に感じている人」の割合が増えるのであって、不快感が増すのではありません。そしてこの「不快」とは、「熱中症の初期症状の気分不良感」と捉えなくてはいけないと思います。
結論! 注目すべきは湿度の高さ
この記事で計算した数値はとてもアバウトなものですが、いかに日本の夏が高温多湿で過ごしにくいかご理解いただけたと思います。つい気温にばかり目が向きますが、湿度の高さこそが蒸し暑さの原因です。クーラーをつけるときは部屋を冷やすだけでなく除湿することも大事です。