朝活に向いていない人もいる! 夜型の無理な早起きは効率と健康に悪い
「朝活」は勉強や趣味に良いっていうけど…
現代の20代~30代は非常に忙しい日々を送っています。残業が常態化している人も多いですし、勤務先が都心部にあるとどうしても通勤時間が長くなってしまいます。自宅と職場の往復を繰り返す日々の中で、ある程度まとまった自分の時間を確保するのはとても難しいことです。
しかし忙しいときほどプライベートの過ごし方が重要になります。ただ漫然と働くだけでは、心身ともに疲れ切ってしまいます。デキると評価されている人ほど時間をうまくやりくりして、趣味や習い事、勉強、スポーツなどを続けているものです。
そういった意欲的な人たちに人気なのが「朝活」です。起きたばかりなので脳や身体がスッキリしていて、周囲が静かなので物事に集中しやすいからです。軽く運動することで血のめぐりがよくなって、一日中気分よく過ごせる効果もあります。
しかし、実際に「朝活」を続けられる人はそう多くありません。
おそらくこの記事を読んでくださっている方の中にも、朝活に挑戦したけど続かなかった人や、朝活に憧れているけどそもそも起きられない人がたくさんいると思います。
朝活に挫折すると自分がダメ人間のように思えて凹みますよね……。友人や職場の同僚など親しい人が成功しているとなおさらです。
でも安心してください。確かに朝活は素晴らしい時間活用術ですが、必ずしもすべての人に有用だとは限らないんです。朝活が苦手な人は、そもそも朝活をしない方がいい人かもしれません。
朝活に向いていない人がいる理由や、朝活の代わりになる時間活用術を見ていきましょう!
人によって最適な「睡眠」は違う
人によって最適な食事量や食事内容が違うように、最適な睡眠時間や睡眠のタイミングもまちまちです。このことはあまり知られていません。むしろある程度努力や節制によって睡眠時間や起床時間はコントロールできると考えている人の方が多いです。
睡眠は疲れた心身を回復させ、起きている間に得た情報を整理するためにあります。つまり私たちが目指すべきは一般的に正しいとされる睡眠ではなく、スッキリした状態で目覚められる睡眠です。
8時間睡眠がベストとは限らない
最適な睡眠時間とは? と質問されれば、多くの人が「8時間」と答えると思います。そして社会人の多くは「平日に8時間も寝る暇はない」と言うでしょうし、「8時間寝られなかったから寝不足だ」と考えている人もいるはずです。
「8時間睡眠」が良いとされるのはあくまで統計上の話です。睡眠時間ごとにわけたグループを調査したところ、8時間睡眠グループが最も健康的で長生きする人の割合が多いという結果が出たのです。
この調査からわかるのは「8時間睡眠がベストな人が多数派」ということだけであって、7時間睡眠や9時間睡眠の人は不健康であると考えるのは誤りです。7時間睡眠がベストな人は7時間眠れば健康的に生きられますし、本当は9時間寝るべき人が8時間睡眠を厳守していれば健康を損ないます。
とはいえ日々の睡眠時間が平均値(中央値)の8時間から大きく外れていると、さまざまな不調の原因になることも調査で明らかになっています。日本の成人の睡眠時間は平均約6時間半程度(男性6時間30分、女性6時間40分)であり、睡眠不足が原因で心身のバランスを崩す人は後を絶ちません。
体内時計は1日約25時間、朝日を浴びて眠気リセット
私たちの身体には「体内時計(概日リズム、サーカディアンリズム)」が備わっていて、自然と規則正しい生活が送れるようになっています。ただし地球の自転は1日1回24時間なのに対し、体内時計の1日は約24時間10分と多少ズレがあります。
このズレを調節してくれるのは朝日です。
体内時計や睡眠のリズムと深く関わる物質に「メラトニン」というホルモンがあります。メラトニンは夜間に大量に分泌されます。体温を下げる効果があり、自然な眠気を誘発します。
メラトニンは強い光を浴びると分泌が止まります。朝日を浴びると目が覚めるのはそのためです。分泌が再開するのは朝日(強い光)を浴びてから14~16時間後で、つまり再び眠気が出るのは起きてから14~16時間後ということです。
7時起きの人なら、メラトニンの再分泌が始まり眠気に襲われるのは21時~23時ごろという計算になります。(日本人が平均的に6時間半しか寝ていないことも含めて)納得できる時間帯ですね。
生活習慣による夜型、生まれつきの夜型
さて世の中には、朝型と夜型の人がいます。両者の違いを「朝に強いかどうか」だと考えている人が多いですが、本当の違いは「早い時間に眠れるかどうか」です。
夜型だと思っていても、睡眠のリズムや体内時計を調整する機能が正常なら朝型へ切り替えることは可能です。最初の数日~数週間は昼間の眠気が辛いと思いますが、自然と就寝時間も早まって、早起き生活に慣れられます。
しかし夜型の人の中には先天的・後天的な理由で、就寝時間が早まらない人がいます。長年の夜更かしが習慣かした人や夜勤がある人のような後天的に夜型になった人は、時間をかければ朝型に切り替えられます。
問題は先天的に寝付く時間が遅い人です。生まれつき睡眠相(1日のうち眠っている時間)が遅い時間にずれています。ベッドに入るのが20時だろうが24時だろうが、3時や4時まで寝付けないような人もいるのです。
夜型の人が早起きしても良いことなし
昔から「早起きは三文の徳」といい、早寝早起きが美徳とされています。
成長ホルモンが最も活発に分泌されるのは22時~2時ごろなので、特に理由なく夜更かしするよりは早く寝る方が、美容にも健康にもいいのは事実です。
しかし夜型度の強い人に限れば、早寝早起きが却って心身の不調を招きます。
社会は多数派に合わせられている
2019年になっても都心部の通勤ラッシュは解消される気配がありません。いくらフレックス制を導入しても、取引先がある以上、基本的に相手の始業時間に合わせざるを得ないからです。IT系・Web系はやや遅めに設定されている企業が多いですが、夜型タイプが多い業界だからでしょう。
私たちは小学生のころから「8時半には活動を始める」訓練をさせられています。朝型の人と、訓練次第で朝型になれる普通の人が多数派だからです。
起きる時間が固定されているから睡眠不足になる
朝型・夜型の本当の違いは、「早い時間に眠れるかどうか」だと上で説明しました。
朝型や普通の人は、朝起きる時間に合わせて早い時間に眠れます。しかし夜型の人は、夜眠れる時間が遅い方にズレたまま固定されているので、起きる時間が早く決まっているほど寝不足になっていきます。
22時に眠れる朝型さんは、5時や6時に起きだして1~2時間の朝活ができます。そしてその日の夜も22時に眠れます。
しかし3時まで眠れない夜型さんは、起床時刻が7時なら、ベッドに何時に入ろうが4時間しか眠れません。普通に生活していても睡眠不足になります。そこまで強烈な夜型じゃなくても、日付が変わる前に眠れない人が朝活時刻に起きても、却って心身の疲れが取れなくなることはご理解いただけると思います。
体質を理解して時間を作ろう
人によって最適な睡眠時間や入眠時間(起床時間)が違うため、すべての人が早起きできるわけではないことがわかりました。
「朝活」が良い方向に作用するのは、朝に能率が上がる朝型体質の人だけです。睡眠相が後ろにズレている夜型体質の人が無理に朝活をしても、能率が上がりませんし、睡眠負債が溜まって体調を崩す可能性もあります。
早起きが苦手な方や、起きた後本調子になるまで時間がかかる方は、無理に朝活するのではなく夕方以降に時間を作るようにしましょう。
ただし夜に頭や身体を使いすぎると眠れなくなるので注意が必要です。また体質ではなく不規則な生活が原因で早寝早起きができなくなっている方は、まず正しい生活リズムを取りもどすことを優先しましょう。