埼京線の終電早すぎ! 沿線住人と利用者の実態の乖離が理由?
はじめに
埼京線を使い始めて約5か月。先日、生まれて初めて終電を逃しました。うわさでは早いと聞いていたものの、いくらなんでも0時台なら1本くらいあるだろうと楽観視していました。0時過ぎの新宿駅で、何も表示されていない電光掲示板を見上げ、呆然と立ち尽くしました。
JR埼京線は、都内と埼玉県を結ぶ大事な路線です。(川越線川越駅―)東北本線支線大宮駅―赤羽線赤羽駅―山手線池袋駅―山手線大崎駅(―りんかい線新木場駅)をまとめて埼京線と呼んでいます。戸田や浦和の住人を運びます。
埼玉県は東京のベッドタウンです。(筆者は遊んだ帰りだったので自業自得でしたが)浦和方面に自宅のある会社員にとって、この終電の早さはキツすぎるのではないでしょうか。なぜ埼京線の終電が早いのか調べてみました。
埼京線と主要路線の終電の違い
まずは他路線と比較して埼京線の終電がどのくらい早いのか比較してみましょう。新宿起点の下り列車と比べます(以下の情報はすべて記事執筆時・2018年5月24日のものです)。
埼京線
埼京線という路線は厳密にはありません。「はじめに」の項目で書いたように、複数の路線をまたいでいて、それを便宜上埼京線としてひとまとめにしています。すべての列車が大宮~大崎間を走るわけではなく、新宿で折り返し始発になる便が多いです。
平日・土曜・休日すべて、新宿発の下り電車終電は、23時55分発の川越行きです。これを逃すと池袋までは山手線で移動しなくてはなりません。ちなみにこの電車は池袋24時発で、山手線を利用してこの車両に追いつくことは不可能です。
0時台は池袋始発の赤羽止まりの電車が4本あります。最終は池袋発0時41分。49分に赤羽に到着したあとは回送になります。
つまり、埼玉県へ向かう電車は23時台でなくなるということです。赤羽からはバスが出ていますが、休日はそういった救済措置もなく、タクシーを利用するしかありません。
京浜東北線
埼京線と並んで埼玉と東京を結ぶ、京浜東北線。赤羽を出ると大宮、もしくは浦和まで走ります。最終は赤羽発大宮行き0時53分。川口方面を経由して大宮へ帰るなら、埼京線の終電から乗り継げます。
中央線・総武線
東京を東西に貫く中央線と総武線。中央線快速の終電は、新宿発0時16分。早く感じられますが、総武線各駅停車が並走していてこちらはかなり遅くまで運行しています。新宿発三鷹止まりは1時1分、武蔵小金井止まりが0時50分、高尾行きが0時41分。
高尾行きに乗れば八王子までカバーできるので、0時41分に間に合えば東京の西方面へは帰れます。西武新宿線、西武池袋線、京王線など東西へ運行している私鉄が多いので、選択の幅は広めです。
山手線
山手線は環状になっています。新宿を起点に外回り(池袋方面)の終電は、池袋止まりが1時ジャスト。品川までぐるりと走るのが0時半。内回り(渋谷方面)の終電も品川止まりが1時ジャスト。大崎止まりが0時47分。
0時半くらいまでの電車に乗れれば、途中で乗り換えが必要かもしれませんが、目的の駅まで到着できるでしょう。
こうしてみると埼京線の終電・23時55分がいかに早いかがわかりますね。新宿駅や東京駅のようなターミナル駅発で、23時台に終電がある路線があるとは思っていませんでした。筆者の田舎は東京と比べるのもおこがましい田舎ですが、0時半や1時過ぎに終電が設定されています。
騒音問題で高架化がお流れになった過去
現在の埼京線を作る計画が持ち上がったのは1970年代でした。当時、人口増加に対応するために通勤五方面作戦という混雑緩和策が取られていました。同時期に東北・上越新幹線の建設が始まりました。
東北・上越新幹線は当初、埼玉県内の地下を通る予定でしたが地盤が弱いため頓挫。高架化案が出ましたが、先に開通していた東海道・山陽新幹線に騒音問題が起きていたため、戸田・浦和・与野・東京都北区が高架化に大反対。のちに埼京線と呼ばれるようになる「通勤新線」を併設することが和解案の1つでした。
かくして1985年に埼京線はなんとか開通。埼玉方面から都内へのアクセスがぐっと良くなりました。徐々に路線を伸ばし、相互乗り入れも増やし、混雑解消も進みました。
新宿が副都心として機能するようになり、山手線の西側(池袋~大崎)に人気の街が集中するようになりました。池袋~赤羽間にたくさんのマンションが建ち、沿線住人の数は増える一方でした。
当然、線路を増やしたり終電を遅らせたりといった要望は常に出ていますが、そもそも騒音問題を懸念した住民の反対が最初にあったので、どれだけ不便でも24時以降の終電は現時点では望めません。
現在、終電が早すぎる問題が「埼玉県民の自業自得」と言われるゆえんです。しかし当時反対した住人と、2018年現在沿線に住んでいる住人は別人でしょう。一概に自業自得とは言い切れないと思います。
また、終電を利用するのは遅くまで働いている人です。遅い時間の電車がないと困ります。一方、騒音を懸念する人は終電の時刻にはすでに寝ている人です。電車を利用しない人にとっては、終電は早い方がいいということです。利害が一致しないのは自明の理ですね。
終電が早い直接的な理由は「車両基地が遠いから」とされていますが、かつての騒音問題を考慮すれば新しい車両基地を作るのも難しいでしょう。
まとめ
利用者の多い路線にも関わらず、埼京線の終電が早いのには理由がありました。反対運動があって拡張が難しいこと、車両基地(電車の家)が遠いこと。
赤羽以北でも都内の2駅はなんとでもなりますが、荒川を超えて埼玉に入った戸田公園以降の駅の人にとっては死活問題だと思います。今後埼京線沿いに引っ越す予定がある人は、終電時刻や電車を逃したときの代理の交通手段をあらかじめ調べておくといいでしょう。