目立って恥ずかしい…痛みのないイボ「粉瘤」ができる原因とは
痛みのない肌色のイボ…それは「粉瘤(ふんりゅう)」
ふと耳たぶや首の後ろに手をやったときコリッと硬いものに触れた。驚いて確認すると、イボのようなものができていた。あるいは毛穴のつまりかと思って放置しているうちに、顔の目立つ部分が膨らんで、どんどん大きくなっている。このような経験はありませんか?
触っても痛みはなく、皮膚の内側になにかの塊が入っているように感じます。見た目もただ皮膚の一部が盛り上がっているだけで、周囲の肌と同じ色かやや赤みがかっている程度です。
もしかするとそれは「粉瘤(ふんりゅう)」と呼ばれる良性腫瘍の一種かもしれません。
服や髪で隠れる部分ならまだしも、顔や首の目立つ部分に粉瘤ができると、老けて見えるからショックですよね。盛り上がりはメイクでも隠せないので憂鬱になります。
粉瘤とはなぜできるのでしょうか。治療法はあるのでしょうか。
粉瘤とは
「粉瘤(ふんりゅう)」とは良性腫瘍の一種です。「アテローマ」「表皮嚢腫(のうしゅ)」などと呼ばれることもあります。恐ろしい病気のように感じますが、粉瘤そのものが健康になんらかの悪影響を与えることはありません。老若男女問わずできる可能性があります。
皮膚の内側に角質や老廃物の塊ができる
わたしたちの皮膚は約28日周期でターンオーバーを繰り返しています。表皮の細胞は上皮組織の一番内側で生まれ、徐々に表面にむかって持ち上がっていきます。その過程で角化が進み、古くなった肌細胞は垢(角質)として剥がれ落ちます。
細胞の角化は基本的に表皮でおきるものです。しかし何らかのきっかけで上皮組織より内側(ターンオーバーで入れ替わらない部分、真皮)で角化が起きることがあります。
表皮に出口があれば角化した老廃物が排出できますが、皮脂や老廃物でふさがれている場合は皮膚の内部にとどまります。その場合、角化した老廃物は薄い膜で包まれます。
繰り返す刺激で細胞が変化(化生)する
角質は肌細胞が内側に徐々にケラチンを溜めていくことで起きます。真皮では本来ケラチンが溜まらないので、角化は起きないはずです。
しかし繰り返し刺激を受けることによって、細胞が変化して、角化するようになることがあります。ほかにもケガが原因で真皮の中に上皮組織の基底細胞が紛れ込んでしまうこともあります。
害はないけど自然治癒もない
粉瘤は理論上全身のどこにでも発生する可能性がありますが、よくできるのは顔や首、耳の裏、背中です。健康に害はありませんが、見た目をそこなうので取りたいと考える人が多いです。
初期はしこり、徐々に肥大化
粉瘤ができたばかりのころは、触れたときにしこりを感じることはあっても見た目に変化はありません。そのためほとんどの人は気づきません。
やがて角化した部分を中心として老廃物が集まり、肥大化していきます。触るとコリコリとしますが、痛みは感じません。ただし無理やり粉瘤を押しつぶしたり取り出したりすると、雑菌が繁殖して痛んだり化膿することがあります。
一度できたら自然に消えることはない
炎症を起こしていない場合はただコリコリしているだけで害はありません。生まれつきできやすい体質で、すべての粉瘤を把握していない人もいます。
ただし放置していても自然治癒することはありません。ターンオーバーしない奥深くの老廃物が自然と排出されることはないからです。
見た目に大きな影響を与える場合や何度も再発する場合は病院で処置してもらいましょう。粉瘤がさほど大きくないなら、電気メスで小さく表面を切り、圧迫して老廃物を押し出すへそ抜き法(くりぬき法)が使えます。根治させたい場合は部分麻酔をして嚢胞ごと切除します。
炎症を起こしている場合はすぐ病院へ
痛みがない場合は様子見でかまいません。しかし粉瘤が炎症を起こしている場合は別です。すぐに皮膚科を受診しましょう。
まずは炎症を抑える
粉瘤内の老廃物で雑菌が繁殖すると炎症を起こし、化膿することがあります。菌さえ押さえれば炎症は鎮まるので、まずは薬を飲んで様子をみます。
炎症さえしずまれば、大きく皮膚を切開することなく、へそ抜き法が使えるようになります。ただし一度感染症を起こすと、薬で抑えても何度も炎症が再発することがあります。
膿が身体の内側へ流れこむと危険
粉瘤が炎症を起こすと、化膿して膿が出ます。肌の外側へ向かって嚢胞が破裂してくれれば、痛みはありますが大したことにはなりません。
もし肌の内側、体内に向かって嚢胞が破裂すると、膿が体内に流れこみます。内臓など内部の器官に膿が触れると命に係わる炎症を起こすこともあります。粉瘤が炎症を繰り返す場合や、急激に大きくなる場合は、早めに受診して切除することをオススメします。
結論! 気になるなら皮膚科へ行こう
粉瘤は、しこりができていても痛みがない場合やさほど大きくない場合は放置しても問題ありません。一生炎症を起こさず、そもそも存在に気付かないことだってあります。しかし炎症を繰り返す場合や、足の裏にできた場合は、悪化しやすいのですみやかに皮膚科にかかることが重要です。
また痛みがなく炎症の心配がなくても、顔や首など目立つ部位にできた場合も皮膚科や形成外科等に相談してみてください。へそ抜き法(くりぬき法)なら皮膚を大きく傷つけることなく、短時間で手術することができます。粉瘤は誰でもできる可能性があるものなので、一人で悩みを抱え込まないでくださいね。