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熱中症にならないために! 水分補給は細胞内外の「浸透圧」の差がカギ

熱中症で水分を吸収できなくなることもある

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熱中症とは高温多湿の環境下などで、体温が下げられなくなった結果、心身にあらわれる症状群をさします。熱中症対策として有効なのは、涼しい環境で過ごすことと水分補給を怠らないことです。

人は体温を下げるために汗をかきます。汗が乾くときに気化熱を奪って蒸発するので体温が下がります。汗の成分のほとんどは水分なので、水分補給が欠かせないのです。

しかし水分補給をきちんと行っているはずなのに熱中症になってしまったり、水分を吸収することができなくなって嘔吐や下痢などの症状が出ることもあります。

身体が水を受け付けなくなるのは、自律神経が高温のせいで乱れるほかに、汗とともに塩分やミネラルが過剰に排出されてしまって、体内の浸透圧のバランスが悪くなることも原因です。

水分を補給するときは、同時に塩飴(塩タブレット)を舐めたり、ポカリスエットのようなスポーツドリンクを飲むことを勧められます。脱水症状が酷い場合は「OS-1」などの経口補水液を飲まなくてはいけないこともあります。

細胞内に水分を吸収させるために必要な「浸透圧」とはどういうものなのか解説します。

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人間の体液は水より濃い

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成人の身体の約60%前後は水分です。体格や体脂肪の量によって差はありますが、生まれたての赤ちゃんは約78%が水分で、歳を取るにつれて水分量は減っていきます。赤ちゃんのお肌がプリプリで、歳を取るとシワが増えていくのは細胞内の水分が減っていくからです。

水分は生物が生きていくために絶対に必要です。生物を形作っているのは無数の細胞ですが、細胞内の70~80%が水であり、ほんの数%減少するだけで命に係わる状態になります。

全身の水分量、すなわち体液の量は体重の約6割ですが、そのうちわけは、細胞内の水分が45%、血液やリンパ液など細胞外の水分が15%程度です。ほかにも組織液といって、細胞と血管の隙間など組織同士をつなぐ役目を果たす体液もあります。

なぜこれほど水分が重要かというと、水はさまざまな物質を溶かして運ぶのにちょうどいいからです。体液があるおかげで、血管から細胞に栄養を届けたり、細胞から不要物をリンパ管に届けたりできるのです。

体液には電解質と呼ばれるさまざまな成分が含まれています。真水と比べると濃度は高めです。

細胞の内側と外側の体液濃度の差が「浸透圧」の差を生む

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細胞は部位によって役割が違うので、細胞内液に含まれている成分は様々です。

一方、細胞の外にある細胞外液は、全身の細胞を正常な状態に保つためにあり、0.9%の濃度の食塩水とほぼ同じです。0.9%の食塩水のことを生理食塩水といいます。1リットルの水に対し9gの食塩水を入れると、濃度が0.9%になります。

動物の細胞は半透膜という、溶媒の小さい分子だけが通過できる穴の開いた膜に覆われています。

人間の場合、細胞内外の体液の溶媒は「水」です。細胞内と細胞外の体液の濃度が違うと、濃度が同じになるように水の分子が半透膜を通り抜けていきます。「浸透圧」というのは水(溶液)の性質であり、浸透圧の差をうまく利用すると細胞にすばやく水分が吸収されます。

人体で浸透圧の調整をしているのは腎臓です。血液中の水分が多いと浸透圧が上がって水分を再吸収します。血液中の水分が減ると浸透圧が下がり、ミネラルを再吸収します。このシステムには水分とナトリウムイオンが必要です。

水分は主に大腸から吸収されますが、脱水症状を起こしているときはうまく吸収できません。糖分と塩分を溶かした水分を摂取すると、大腸だけでなく小腸から吸収できるようになります。ポカリスエットや経口補水液はこの仕組みを利用しています。

まだ熱中症じゃないなら麦茶で十分

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熱中症はなってからの対処より予防が重要です。まだ熱中症ではなく身体が正常なときの水分補給は、ミネラルが豊富な麦茶が一番です。あわせて塩分補給もしましょう。

普段から糖分が多く配合されたポカリスエットや経口補水液(OH-1など)を飲み続けていると、ペットボトル症候群という急性の糖尿病になってしまいます。

熱中症の症状が出た場合は、ポカリスエットや経口補水液を少量ずつ摂取すると水分の吸収が早まり、回復しやすくなります。

まとめ! 緊急時は浸透圧が高いものを飲もう

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人の体液は濃度が0.9%で、常にそれを保つように作られています。浸透圧を調整する腎臓には、水分とナトリウムイオンが必要です。また汗で体外に排出されたミネラル類も補わなくてはいけません。汗をかいたときは水分と同じくらい塩分補給が重要です。軽い熱中症のときに甘いポカリスエットがいいとされるのは、小腸から水分を吸収できるようになるからです。

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