最初の患者が出るのは9月
日本では毎年11月~3月にインフルエンザが流行します。最近はあまり聞かなくなりましたが、インフルエンザは流行性感冒(流感)とも呼ばれます。
インフルエンザウイルスは気温が20℃程度で、湿度が低い環境下でもっとも活発になります。日本においては秋冬シーズンが該当します。冬季に集中して大流行するので「季節性インフルエンザ」といいます。
一般的にはワクチン接種のはじまる10月ごろから、インフルエンザを意識し予防に努める方が多いと思います。
実際には最初の患者が出るのは毎年9月上旬ごろです。2018年も9月1日に大分県でインフルエンザによる学年閉鎖が発生したのを皮切りに、全国に感染者が広がっていきました。
とはいえ9月はまだ気温も湿度も高いので、全国的な流行には結び付きません。感染者数が爆発的に増えるのは10月下旬や11月に入ってからです。
すでに各医療機関でインフルエンザの予防接種が始まっています。2018-2019シーズンのインフルエンザの特徴や、ワクチン接種のメリット・デメリットをまとめました。
2018年-2019年シーズンのインフルエンザの特徴
インフルエンザには大きくわけて3つの型(A型、B型、C型)と、いくつかの亜種(変異型)があります。1つの型が猛威を振るうことが多いのですが、ときどき複数の型が同時に流行したり、新型ウイルスが発生したりします。
季節性インフルエンザの原因・A型
冬になるたび大流行して多くの人を苦しめるのは、「A型インフルエンザ」です。B型よりも高熱が出て、諸症状が重症化する傾向にあります。
亜型がたくさんあります。人間に感染して流行を引き起こすのは主に「H1N1」「H3N2」「H1N2」などです。
日本でよく耳にするのは「A香港型」こと「H3N2亜型」でしょう。危険度が高いのは、スペインかぜの原因株である「H1N1亜型」の直系のウイルスです。症状が酷い上に、突然変異でパンデミックを引き起こす可能性も指摘されています。
お腹にくるインフルエンザはB型
B型インフルエンザには亜型がありません。感染するのも人間とアシカ亜目(オットセイなど)だけです。感染する動物が少ないため、大流行には至りません。症状も総合的に見るとA型より軽く済みます。
ただし腹痛などのお腹の症状がA型より強く出る特徴があります。いくら重症化しにくいと言っても、油断は禁物ですね。
新型インフルエンザは人から人へうつるもの
インフルエンザウイルスはしばしば突然変異を起こします。「鳥インフルエンザ」や「豚インフルエンザ」などの人間には感染しないタイプの流行でも大騒ぎになるのは、放置しているとある日突然人間にも感染するように変異する可能性があるからです。
感染が「ヒト→動物」「動物→ヒト」と一方通行のうちは、お互いが触れ合う機会が少ないのでパンデミック(世界規模の大流行)には至りません。
ウイルスが突然変異して、ヒトからヒトへうつるようになるとパンデミックを起こします。近年では2009年に豚由来のインフルエンザが、ヒトからヒトに感染するようになって「新型インフルエンザ」として大流行しました。
2018-2019年シーズンは、今のところ「例年通り」
2018年10月19日現在、新型インフルエンザの流行は確認されていません。すでに知られている型のインフルエンザが流行すると見込まれています。
問題になっているのは薬剤に耐性がついているウイルスが増えつつあることです。日本は世界で一番多くインフルエンザ治療に薬を用いているので、耐性のあるウイルスが生まれやすいのです。ワクチン接種で感染や重症化を防げば、薬を使わなくてすみます。
毎年10月から予防接種スタート
毎年10月になるとワクチンが医療機関に供給され、予防接種が始まります。
インフルエンザウイルスにはたくさんの亜型(株)があって、その年に何が流行するかはわかりません。しかしワクチンのメーカーは、流行が始まる前の10月には医療機関に売り始めなくてはいけません。
どのようにしてその年に流行るであろうウイルスの型を特定するのでしょうか。また外れたらどうするのでしょうか。
インフルエンザの流行時期は国・地域によって違う
インフルエンザは世界中で流行しています。温度より湿度が重要で、湿度が50%を超えると死滅する一方、50%未満なら生き延びられます。
日本で気温が下がり、湿度が50%をきるのは冬季だけです。しかし日本以外の国や地域では、条件を満たす季節や時期が違います。たとえば南半球は夏に流行が起きますし、赤道直下では流行が起きにくい代わりに季節による差がありません。
北半球のワクチンはWHOの発表に合わせて作る
毎年2月に、WHO(世界保健機関)が北半球で次シーズンに流行するであろうウイルスの亜型(株)を発表します。各国のメーカーはその発表にあわせて、次シーズンのワクチンを製造します。
日本では厚生労働省が最終的にウイルスの株を決定します。2018年は4月19日に発表されました。
内訳は、A型2種(「H1N1」pdm09、「H3N2」)とB型2系統の合計4種類です。4種のウイルス株から作るので、4価ワクチンといいます。
2018年10月のワクチン供給量は例年通り
昨年(2017年10月)はワクチンの供給量が不足していると話題になりました。インフルエンザのワクチンは一気に大量生産することができません。また世界中の人にいきわたるほどの量を作るのも、現在の技術では不可能です。
パンデミックを防ぐため、医療機関に勤めている方は優先的に接種を受けます。またインフルエンザが致命傷になりかねない高齢者も優先されます。2017年は健康な成人を後回しにしても不足するのが問題視されました。
さいわい、2018年10月現在、ワクチンの製造は例年通りのペースで行われています。優先的に接種する方の分だけでなく、必要量すべてを製造できる見込みです。
供給不足を防ぐため、ワクチンを大量生産する方法が模索されています。
予測が外れることもある
WHOや厚生労働省の予測は、高確率で次のシーズンに流行する株を決定します。かなりの確率で当たりますが、ウイルスも生き物なので、ワクチン用に指定した株以外のものが流行してしまうこともあります。
またいつ発生するかわからない新型インフルエンザに、即座に対応するのは難しいです。
ただウイルス同士の特徴は似ていることが多いので、違うウイルス株から作ったワクチンでも、それなりに効果があります。
予防接種のメリットとデメリット
「ワクチンが不足しがちなら打たなくてもいいのでは?」「副反応(副作用)が怖いから接種しない」と考えている方もいると思います。たしかに必要以上の量を健康な成人が接種するのは控えるべきですが、1シーズン1回接種ならメリットが非常に大きいです。
メリット:インフルエンザに罹る可能性が大幅に低まる
インフルエンザワクチンを接種すると、2週間程度で体内に抗体ができあがり、5か月程度持続します。抗体がある間は、ウイルスが体内に入ってきても増殖を抑えられます。
完璧に抑えられるとは限りませんし、違う型のウイルスが流行するかもしれません。それでも多少なりとも抗体があると、罹ったときの症状はとても軽く収まります。
インフルエンザが重症化すると合併症が出ます。感染しても軽症で済むなら、合併症を発症する可能性も下がります。インフルエンザに罹らないためではなく、罹ったときの被害を最小限に抑えるために打つと考えましょう。
デメリット:副反応(ワクチンの副作用)が出る
インフルエンザワクチンを接種すると、注射した患部が腫れたり痒くなったりすることがあります。これを副反応といいます。たいていの場合2~3日で収まります。また頭痛や発熱など、軽い風邪のような症状が出ることもあります。これも2~3日で収まります。
軽度の副反応はわりと多くの人に出ます。まれに重度の副反応が出る人もいますが、確率的には非常に少ないと言われています。少なくともインフルエンザに罹る確率よりもずっと少ないです。
アレルギーの人は接種できない
インフルエンザのワクチンは卵を利用して製造します。ですのでアレルギーがある人は接種できません。2018年現在、アレルギーがある人にも接種できるワクチンの製造法の研究が進められています。
まとめ! 仕事が休めない人は受けた方がいいかも
ワクチン接種によってインフルエンザの感染と、罹ったときの重症化を抑えることができます。体力のある健康な成人は、インフルエンザに罹ったときにただちに命に係わる危険性は高齢者や子供よりも少ないです。ただ、罹ったら絶対に仕事を休まなくてはいけませんし、症状が軽すぎると気づかないうちにウイルスをばらまいいてしまうこともあります。あくまで任意ですが、アレルギーがないのなら、ワクチンを打つメリットの方がデメリットより勝ると思います。