はじめに
高度成長期の日本には公害が蔓延していました。中でも「水俣病」「第二水俣病」「イタイイタイ病」「四日市ぜんそく」の四大公害は特に大きな被害をもたらしました。これらを教訓にして日本では汚染物質の廃棄に厳しい制限が課せられるようになりました。
工業廃水の垂れ流しは改善されましたが、自動車などの排ガスは減ったとはいえ未だに大気を汚染し続けています。アスベストのような新しい素材による公害も発生しました。
日本に遅れること数十年、中国も経済成長が始まりました。現在の中国はかつての日本がそうだったように、生産性を上げることを重視し、環境汚染対策が後回しになっています。土壌も汚染されているため、黄砂とともに飛来するPM2.5(微小粒子状物質)が日本を含めた東アジア各国で問題になっています。
PM2.5は健康へ悪い影響を及ぼし、特に喘息を悪化させるリスクが高いと言われています。
PM2.5は呼吸器の炎症の原因
PM2.5は2.5μm(0.0025mm)以下の小さな大気汚染物質です。空を飛んでいるうちに細かく砕けた黄砂や花粉、黄砂に付着していた化学物質、大気中で化学反応が起きて生成された物質など様々なものがあります。
人間の身体には有害な物質を吸い込まないようにする防御機構(鼻毛など)がありますが、PM2.5はとても小さいのでそれらをすり抜けて気管支や肺に到達します。大部分は息を吐くときに再び出ていきますが、一部は気管支や肺胞に張りつきます。
PM2.5は化学物質なので気管支に付着すると炎症の原因になります。またPM2.5にはオゾンや二酸化硫黄のような人体に刺激を与える物質と絡まっていることがあって、そのせいで気管支が収縮してしまうこともあります。
PM2.5に限らず、異物を吸い込んだとき人間は咳を起こして排出しようとします。花粉や黄砂の季節に咳こむ人が多いのにはこのような理由があるのです。
咳喘息はやがて喘息へ
風邪を引いたときや異物を吸い込んだとき、むせたときは誰でも咳が出ます。しかし咳が長く続くと心配ですよね。
8週間以上慢性的に咳が続くと「咳喘息」と診断されます。症状は喘息とちがってひたすら空咳(痰が絡まない、乾いた咳)が続くだけです。アレルギー体質の人はなりやすく、気道が炎症を起こして咳が出ます。花粉やPM2.5も咳喘息の原因の1つです。
症状は咳だけとはいえ馬鹿にはできません。強い咳が続くと肋骨が疲労骨折してしまうこともあります。症状は朝晩に出やすいのですが、天候や気温の変化によって昼間に起こることもあります。
咳が続くようならすぐに病院に行って検査をしましょう。結核など別の病気が原因かもしれませんし、咳喘息患者のうち1/3は気管支喘息に移行するというデータもあります。初期に適切な治療を受ければ悪化しにくくなります。
ちなみに気管支喘息は咳以外に、喘鳴(呼吸をするときに、ゼイゼイ、ヒューヒューと音がする)がしたり、息が苦しくなったりします。
わたしはもともと気管支が細く、咳喘息がきっかけで喘息になってしまったのですが、発作が出る前に気管支を拡張する薬を吸入し、アレルギーを抑える薬を服用することによって、ほとんど支障なく日常生活が送れています。
まとめ
PM2.5は呼吸器に炎症を起こすので危険なのです。元々アレルギー体質の人や花粉症の人は、気管支が過敏になっているので、少量のPM2.5にも過敏に反応して咳喘息が起きるかもしれません。花粉症用マスクでPM2.5を吸わないように気をつけ、うがいを徹底しましょう。