はじめに
最近とみに物忘れが激しくなったと感じている人はいませんか? 30代にもなれば多かれ少なかれ「ど忘れ」は誰にでも発生します。よく母が近所の奥様との井戸端会議で「アレ」「ソレ」を連発していて(よく通じるものだ)と感心したものですが、気づけばわたしも「アレ(リモコン)取って」などと言うようになってしまいました。
これはある程度仕方のないことです。家族や親しい人なら通じるから誰でも横着になります。また忙しいと頭が回らなくなって一時的に言葉が出にくくなることもあるでしょう。
最近問題になっているのは、この物忘れが30代より若い若年層に広がっていることです。
日テレニュースによると、物忘れ外来受診者の30%が40代~50代、10%が20代~30代だそうです。この世代は本来まだ認知症になるような年齢ではありません。
受診者のすべてが「若年性認知症」なのかというと必ずしもそうではなく、スマホの使い過ぎで脳が情報過多になり、脳が疲労してしまっている状態なのだそうです。脳神経外科医の奥村歩医師はこの状態を「スマホ認知症」と呼び、気を付けるよう警鐘を鳴らしています。
スマホを使い始めてから物忘れが増えたといえば心当たりのある人も多いハズ。スマホ認知症になったり、スマホ認知症から脳の老化が進んで認知症になってしまわないように、若いうちに対策を取りましょう。
スマホ認知症とは
スマホ認知症とは、1日中スマホを使うことにより情報過多の状態になり、脳が疲れて物忘れが激しくなったり感情がコントロールしづらくなったりすることいいます。スマホというより過剰なネットサーフが原因ですが、スマホが普及してから目立つようになった症例なので、便宜上「スマホ認知症」と呼ばれています。正式な病気ではありません。
スマホはとても便利な道具です。わたしも、ガラケー時代は「携帯電話を携帯しろ! 定期的に充電しろ!」と叱られるくらい放置していたのですが、スマホの地図アプリの便利さを知ってからは手放せなくなりました。いまでは複数台持ちで文字通り1日中触っています。電子書籍アプリで読書をしていることが多いです。
電車の中を見渡すと、スマホでゲーム・読書・SNS(TwitterやLINE、Instagram)チェック、ニュースアプリをチェックしている人が大勢います。「若者の活字離れ」が叫ばれて久しいですが、紙媒体の読書量が減っただけで、むしろ「文字を読む時間」は格段に増えています。
しかしそれは良いことではありません。スマホは長文に不向きな分、短文や細切れな文を表示するのは得意です。SNSやニュースアプリは、常にさまざまな情報を流し続けています。ぼんやり読んでいるだけでもあっという間に情報過多になってしまいます。
情報過多で脳が疲れる
人が夢を見るのは、昼間にインプットした情報や覚えた感情を脳が整理しているからだと言われています。わたしたちが眠っているときや、ぼんやりしているときにこそ、脳は情報をせっせと処理して記憶の引き出しにしまってくれています。
脳にとって「何もしない時間」というのはとても大切なのです。
しかしスマホが登場して以来、人は四六時中情報にアクセスするようになりました。この「情報」というのは、ニュースや読書に限りません。ゲームやYouTubeの動画だって脳にとっては情報です。休みなく情報にアクセスすることで脳は許容量を超え、過労状態に陥ります。
脳が過労状態になると、神経伝達物質の分泌量が減ります。頭の働きがにぶり、物忘れが多くなり、イライラするようになります。酷くなるとうつ病になったり、脳の老化が進んで本物の認知症にかかりやすくなります。
スマホ認知症の対策
情報過多で脳が過労状態に陥っているのですから、脳を休ませてあげるのが一番の対策です。具体的には意識して「ぼんやりする時間」を作るようにしましょう。
通勤中のゲームが精神的な息抜きだという人もいるでしょう。しかしあなたに息抜きが必要なように、脳にも息抜きが必要です。一駅5分の間だけでも「ぼ~っ」とする。そのぼんやりする時間で、脳はリフレッシュできます。
スマホを長時間使う人だけでなく、毎日PCに向かう人も同じように意識的にぼんやりする必要があります。
また自分自身の脳で考える習慣をつけるのも、認知症全般の対策にいいと言われています。わからないことがあればすぐにネットで検索をかけるのではなく、思い出す努力をしたり自分で考えたりしましょう。脳は使わないとどんどん衰えていきます。仕事が忙しいと脳も過労になりがちですし、PCやスマホは脳の特定の部位以外をあまり使いません。
運動に使う脳の部位は、スマホ利用時とは違うので、身体を動かすのも脳に良い刺激を与えてくれます。スポーツをする時間はなかなかとれなくても、階段の利用を増やしたり、歩きスマホをやめて運動刺激に集中することはできますよね。
物忘れと認知症の違いとは
急に物忘れが激しくなると不安になりますよね。アルツハイマーや若年性認知症の可能性が頭をよぎるでしょう。しかし物忘れと認知症はまったくの別物なんです。
物忘れ:昨日の夕飯のメニューが思い出せない
認知症:昨日、夕飯を食べたかどうかわからない
おおざっぱに言うと、エピソードを思い出せないのが物忘れ、エピソード自体を覚えていないのが認知症です。
とはいえ素人にはただの物忘れと認知症の初期症状の区別をつけることが難しいです。認知症は症状が進むと病識(自分が病気だという自覚)がなくなる場合が多いので、不安を感じた場合は早めに認知症外来を受診することも大切です。
まとめ
この記事を読んでくださった方の中にも「スマホ認知症」の症状が当てはまる方はいらっしゃると思います。スマホをいじるのは楽しいですが、脳のためにも将来の健康のためにも、もっと意識的に脳を休めるようにしてくださいね。