美的観点から問題になる粉瘤
こちらの記事でもご紹介しましたが、粉瘤とは、本来角化が起こらない真皮(上皮組織より内側部分)で角化が起きる病気です。良性腫瘍の一種で、自然治癒することもありませんが害もありません。
放置しても問題ありませんし、そもそも粉瘤ができていることに気づかない人もいます。しかし顔や首など目立つところにできやすいという特徴があるので、美容面でしばしば問題になります。
シミやしわとならんで、イボは「高齢者にできるもの」という印象が強いです。そのため粉瘤が大きくなると老けてみえるようになります。
また無症状の人も多い反面、炎症を起こし化膿することもあります。粉瘤(嚢胞)が破裂したとき、肌の表面にむかって膿が流れてくれればいいのですが、身体の内側に向かって流れると危険です。
粉瘤ができたときに受診すべき科や、粉瘤の切除手術にかかる負担について調べました。
粉瘤を診察してくれる科は?
粉瘤(または粉瘤とおもわれるイボ状のしこり)ができたとき、何科を受診すればいいのでしょうか。
皮膚科
皮膚の異常はやはり皮膚科の先生に診ていただくのが一番です。
皮膚にシコリ(イボ)ができる病気は、粉瘤腫以外にもあって素人には判断できません。粉瘤だと思い込んでいたら癌だったという例もありますし、現時点では良性腫瘍でも時間が経って刺激を受けるうちに癌化してしまうこともあります。
ほくろもそうですが、足の裏にイボ・シコリができた場合はすみやかに皮膚科を受診しましょう。常に体重がかかるので、他の部位に比べて癌化しやすいからです。
形成外科
形成外科とは、外から見える部分の醜状変形を(機能もふくめて)正常に治してくれる科です。先天性の異常のほかに、やけど跡への皮膚移植や手術でとった乳房再建などを行っています。
粉瘤も後天的な醜状変形の一種なので、形成外科の治療対象になります。
名前が似ているのでまぎらわしいのですが、整形外科や美容整形(美容外科)とは別ものです。整形外科は骨折やリウマチ、ヘルニアなどでかかります。骨折で見た目や身体機能が悪くなった場合は形成外科にかかります。
美容外科は個人の美意識にもとづいて見た目を変える科で、ケガや病気の治療をする科ではありません。そのためほぼすべての診療に保険がききません。粉瘤は腫瘍なので、保険が適用される形成外科で治療してもらいましょう。
どのような手術をするの?
真皮の細胞が角化し皮脂などの老廃物とともに薄い膜でつつまれたものが粉瘤です。皮膚の深い部分に、老廃物のつまった袋(嚢胞)ができて徐々に成長していくと考えてください。
雑菌が袋の中の老廃物と触れると、繁殖して炎症を起こします。炎症を起こしたら薬による殺菌治療を行います。たいていの場合、薬だけで炎症が治まります。
手術で粉瘤を切除するのは、実が目に影響が出る場合や何度も炎症を繰り返す場合です。
へそ抜き法(くりぬき法)
粉瘤のサイズが小さく、炎症も起こしていない場合は「へそ抜き法(くりぬき法)」という負荷の少ない手術法が選べます。電気メスを使って患部の表皮と粉瘤の袋の一部をくりぬき、圧迫して老廃物や袋そのものを体外に押し出します。
手術にかかる時間は数分程度です。治療費は粉瘤の場所やサイズによって変わりますが、炎症を起こしているものを切除するのに比べるとずっと安く済みます。
傷口は半月ほどでふさがり、目立たなくなります。目立つ場合でもニキビ跡程度です。
根治させたいなら丸ごと切除
粉瘤のサイズが大きい場合や、化膿してしまっている場合、老廃物がかたく固まってしまっている場合はへそ抜き法(くりぬき法)が使えません。また足の裏のできものはすべて根治させる必要があるので、切除するしかありません。
患部をメスで切開し、粉瘤を完全にとりのぞいて縫合するので炎症を繰り返すタイプにうってつけです。こちらも日帰りできます。
へそ抜き法(くりぬき法)と違って縫うので、傷口は目立ちます。切除するかどうかは医師とよく相談してください。
結論! 粉瘤切除は簡単です
粉瘤かな? と思ったら皮膚科で診察してもらいましょう。粉瘤ではなく別の病気の可能性もありますし、粉瘤の状態にあわせて適切な治療法を紹介してもらえます。
粉瘤だと確定すれば、良性腫瘍なので基本的に放置しても問題ありません。治療や手術が必要になるのは炎症を起こす場合だけです。ただ鼻やあごなど目立つ部分が大きくふくらむようなら、無症状でも手術にふみきった方が気分が楽になると思います。