はじめに
漢方と聞いて最初に思い浮かべるのは、漢方薬ではないでしょうか。そして、薬膳は漢方薬を入れた料理と想像する方が多いようですが、そうではありません。
漢方も薬膳も元を辿れば、中国由来の医学からきています。どちらも健康に導いていくという目的は同じでが、両者は全く違うものなのです。
今回は漢方と薬膳の違い、薬膳でも摂り入れやすく生薬にもなっている食材を紹介します。
漢方とは?
薬のイメージが強い漢方ですが、実は広い意味では医学や薬学、薬膳などを含んだ領域のことを指して言います。漢方薬は、漢方医学で使われる薬です。
漢方薬の原料は薬草を乾燥させた生薬で、生薬=漢方薬と勘違いされることもあります。でも、漢方薬は一種類ではなく、いくつかの生薬をブレンドして作られたものなので同じではありません。
薬草一種を指すときは生薬、複数が組み合わさって一つになったものが漢方薬です。風邪の引きはじめに効果があると言われる「葛根湯」も、主成分である葛根にショウガや桂皮など数種類の生薬が加わっています。
薬膳とは?
薬膳は漢方薬入りの料理とイメージする方がいますが、そうではありません。漢方薬がいくつかの生薬をブレンドした薬なのに対し、薬膳は食材と生薬、食材同士を組み合わせた料理で、簡単に言うと健康になるための食事法です。
薬膳ではすべての食材には効能があり、食べ物で病気を防ぎ、治療もできると考えられています。漢方薬ほど効果が早く現れるわけではありませんが、日頃から病気にならないように体調を整えることができます。
よく、「旬の食材を食べましょう!」と言われますが、これも薬膳に基づいたもので、旬の食材は栄養価が高く、季節によって変化する体を整える役割があります。例えば、夏に旬を迎えるトマトは体を冷やす作用があり、火照った体をクールダウンしてくれるんですよ。
漢方薬にも配合されている薬膳で摂り入れやすい食材
食材同士を組み合わせた薬膳に健康効果はありますが、もっと効果を高めたいなら食材と生薬を組み合わせた薬膳がおすすめです。
生薬は専門のところに行かないと手に入らないと思うかもしれませんが、ネットでも入手できますし、乾燥して生薬になる前の段階ならスーパーや自然食品を取り扱うお店でも購入できます。
薬膳に取り入れやすく生薬にもなっている代表的な食材を紹介します。
くるみ(胡桃仁:コトウニン)
おつまみやおやつのイメージがあるくるみですが、実は生薬として使われています。コンビニなどで売られているものは、塩が加えられていることが多いですが、薬膳ではローストしたものの方が効果は高いのでおすすめです。
流行りのはちみつナッツにしても良いですし、サラダのトッピングも良いですね。シナモンと合わせるとアンチエイジング効果が高まるので、パウンドケーキに入れることもおすすめです。
効果:冷え性改善、膝や腰痛の緩和、咳や喘息の緩和、アンチエイジング、便秘解消、認知症予防
なつめ(大棗:タイソウ)
デーツという名でドライフルーツとしても販売されており、小豆のような甘味が特徴です。砂糖不使用のドライフルーツはそのままでも美味しく食べられます。葛根湯にも配合されており、漢方薬では苦みのあるものと組み合わせています。
韓国の薬膳料理ではサムゲタンにも使われていますが、なかなかサムゲタンを作ることはないですよね。おすすめはグリーンスムージーの中に入れる方法です。甘味が強いので癖のある野菜と組み合わせてもマイルドな味になります。
効果:冷え性改善、鎮痛作用、貧血改善、便秘やむくみ解消、女性特有の不調の改善
ショウガ(生姜:ショウキョウ)
日本でもお馴染みの生姜は、独特な辛みから薬味に使われています。スーパーで手に入るのは生ですが、漢方薬では根茎を乾燥させたものが使われています。かなりの種類の漢方薬に配合されていることからも、効能の高さが伺えます。
豆腐や素麺などの薬味に使うことも良いですし、殺菌作用が強いため、臭い消しに使うこともでき、青魚と一緒に使うことがおすすめです。
効果:冷え性改善、吐き気を抑える、食欲増進、代謝アップ、殺菌作用
シソ(紫蘇葉:シソヨウ)
日本では「ゆかり」でお馴染みのシソ。お刺身のつまや、薬味で用いられることが多いです。飾り的な存在なので食べる方は少ないかもしれませんが、乾燥したものは生薬として使われているので、薬膳を意識するならこれからは一緒に食べてくださいね。
梅干しやレモンなどの酸味のある食材と合わせると疲労回復効果が高まり、ショウガやネギと合わせると冷え性を改善し、風邪予防にもなると言われています。
効果:アレルギー症状の緩和、アンチエイジング、ダイエット、咳や痰の緩和、解熱、食欲増進、抗菌作用
ハトムギ(薏苡仁:ヨクイニン)
肌荒れを改善するサプリやニキビ肌のスキンケア用品に、ヨクイニンという名前で配合されていて、身近な生薬の一つです。ハトムギはイネ科の植物で、脱穀した状態で販売されているので、ご飯を炊くときに混ぜたり、サラダにトッピングしたりと簡単に食べられます。
最近ではハトムギ糖という甘味料や、お菓子作りに活用できるハトムギ粉もあるので、色々な方法で取り入れやすいです食材になっています。ただし、妊娠中の方は摂取しない方が良いので注意してください。
効果:ニキビや肌荒れの緩和、代謝アップ、むくみ解消、便秘解消
これらはほんの一部で、まだまだ種類はたくさんあります。食材や生薬の効果を知ると、料理を作るのも食べるのも楽しくなりますよ。
まとめ
漢方=薬と思いがちですが、医学や薬学、薬膳などを含む中国由来の医学の総称です。漢方薬も薬膳も、体質に合わせた組み合わせの薬や料理で健康になることを目的としています。即効性があるのは漢方薬ですが、病気にならない体作りが大切!
食材同士を組み合わせた薬膳ももちろん効果はありますが、より健康や美容を意識したい方は、生薬にもなっている食材を使った薬膳を意識してみてはいかがでしょうか?