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GWは古典文学に親しむ! 新元号・令和の元ネタ「万葉集」を読みたい方へ

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「平成」も残すところあとわずか。2019年5月1日からは元号が「令和」に変わります。史上初めて漢籍(中国の文献)ではなく日本の古典から名づけられたということで、元ネタの「万葉集」に注目が集まっています。ゴールデンウィークに万葉集を読んでみようと考えている古典初心者の方へのアドバイスをまとめました。

「令和」は万葉集から取られた元号

梅の花と令和
引用元:https://www.photo-ac.com/

「平成31年」は4月30日まで。2019年5月1日からはいよいよ「令和元年」。新天皇即位とともに新元号がスタートします。

さて新元号「令和(れいわ)」ですが、「万葉集」に収録されている歌から取られました。これまでの元号はすべて漢籍(漢字で書かれた書籍、中国の古典)から取られていて、国書(日本独自の古典作品)から名付けるのは史上初の試みです。

このことからにわかに万葉集ブームが起きています。新元号が発表された直後から万葉集関連書籍が飛ぶように売れています。特に令和の出典である、『万葉集』巻五・「梅花歌三十二首」を読んでみたいと考えている方が多いようです。

ただ日本最古の和歌集ですから、原文や書き下し文を読むには漢文・古文の知識が必要です。もちろん現代語訳も出版されていますが、和歌集なので現代語訳を読むだけではあまり意味がなく、最低でも対訳を見て読み解いていく必要があります。

受験勉強ではないのですから雰囲気さえ味わえればOKです。専門家の方もブームをきっかけに古典に親しむ人が増えてくれればうれしいとコメントしています。しかしだからといっていきなり万葉集を買ってきても、ほとんどの方は楽しめずに飽きてしまうと思います…。

せっかく万葉集に触れるなら、少しくらいは「和」の雰囲気を味わいたいですよね。

古文・漢文が苦手な方や、古典初心者の方でも楽しめる万葉集関連テキストや、これだけは押さえておきたい知識をご紹介します。

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万葉集とは?

万葉集
引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/万葉集

万葉集(萬葉集)は現存する日本最古の和歌集です。奈良時代(8世紀)末ごろに、大伴家持(中納言家持)が編纂したと考えられています。大伴家持は三十六歌仙にも数えられる高名な歌人で、百人一首に収録されている「かささぎの渡せる橋におく霜の白きを見れば夜ぞ更けにける」が現代では最も有名な歌です。

漢籍の影響が強い! 原文は漢字のみ

現代に伝わる万葉集は全20巻で、4,500首以上の歌が収録されています。原本はすべて漢字(とそれを崩した万葉仮名)で書かれています。ひらがなやカタカナは万葉仮名をさらに崩して作られました。

例えば新元号令和の元ネタである「巻五 梅花の歌三十二首并せて序」は…

原文:
于時 初春令月 氣淑風和 梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香

書き下し文:
時に、初春の令月にして、気淑く風和ぎ、梅は鏡前の粉を披き、蘭は珮後の香を薫す。

…となっています。とても難しいですね。書き下し文ですら、古文が得意じゃない限り辞書がないと意味がわかりにくいです。ちなみにこれは「序文」です。誰かの和歌から取ったわけではないんですね。

漢字を当て字扱いで和歌を表現

まだひらがなが無かったので、歌も当然漢字で書かれています。内容は漢詩ではなく、漢字の読みだけを借りて和歌が表現されています。

以下に、大伴家持の歌を引用します。

春野尓 安佐留雉乃 妻戀尓 己我當乎 人尓令知管(08/1446) ハルノノニ アサルキギシノ ツマゴヒニ オノガアタリヲ ヒトニシレツツ 春の野に あさる雉の 妻恋ひに 己のがあたりを 人に知れつつ

中国で生まれた漢字を借りて、奈良時代には日本の和歌を表現する文化が出来上がっていたのがわかります。その後、平安時代に平仮名やカタカナが成立したことによって、源氏物語をはじめとする多くの古典文学が誕生しました。

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初心者や古文苦手さんにもオススメなのは?

書店とスマホ
引用元:https://pixabay.com/ja/

万葉集の原本は漢文調で、のちの時代にさまざまな学者によって漢字仮名交じりの古文調に翻訳されたことは上でも触れました。21世紀に生きる私たちが読めるのは古文調のものでしょう。

実際、現代で出版されている「万葉集」の多くは、書き下し文(古文)版に現代語訳を付け足したものです。現代語訳のわかりやすさは時代によって変わりますから、なるべく出版年が新しいものを選びたいですね。

初心者向けと銘打たれているもの

万葉集には4,500首以上もの歌が収録されています。古典文学初心者がいきなり全訳版を読むのは難しいので、有名な部分だけピックアップされている抄訳版がおすすめです。

その中でも、ただ書き下し文と現代語訳を併記しているだけの本ではなく、歌の意味や歌が詠まれた背景などが丁寧に解説されている初心者向けの導入本が読みやすいと思います。

例えば「令月」も、現代人の感覚ではなんのことかわからないですよね。「令」は「良」に通じ、令月とは美しい月のことである、というような解説が欲しいです。

古代史の観点から解説されているもの

中学や高校で古文・漢文を習いますが、そこで身に付くのはたいてい「試験に出る問題の解き方」だけです。筆者も典型的な「テストは解けるけど、出題された古文の意味はわかっていない」タイプです。

1,000年以上前と現代では文化も使われている言葉も全然違いますから、ただ古典の授業を漫然と受けるだけでは歌の意味を理解するのは難しいです。歌が詠まれた時代の歴史的背景や文化的背景を勉強することではじめて意味が通じます。

古文は苦手だという方は、万葉集が成立した奈良~平安の歴史・文化について書かれた本を読むのはどうでしょうか。背景を先に学ぶことで、万葉集をはじめとする古典文学の理解が深まります。

Kindle Unlimitedで配信されているもの

万葉集が飛ぶように売れているそうです。しばらく待てば中古書店やフリマアプリで安く手に入るとも言われています(笑)

「Kindle Unlimited」に加入されている方なら、万葉集と万葉集にまつわる文献の一部が無料で読めます。電子書籍ならわからない言葉をその場で検索できるという利点もあります。

ほかにも万葉集を写経するノートのような変わった商品も販売されています。

脈々と受け継がれる和の文化に想いを馳せて

和綴じの本と硯
引用元:https://www.photo-ac.com/

多くのものが機械化されスマホで何でも事足りるようになった現代。平成という時代はテクノロジーが凄まじい勢いで進歩しました。機械やITが苦手な方にとっては大変な時代だと思います。

新時代のテクノロジーを使いこなすことも大事ですが、10連休という長い休暇だからこそいにしえの和の風情に想いを馳せることもまた日本人として大切なことだと言えます。

万葉集は難しすぎて読めないという方も、良い機会ですから、万葉集が成立した奈良時代末期や日本古典文学が花開いた平安時代の歴史を学んでみるというのはいかがでしょうか? グローバル社会を生き抜くためにも自国の歴史や文化にある程度触れておきましょう。

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VENGA編集部
VENGA編集部です。コンプレックスを持つ女性に寄り添う記事をお届けします。

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