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秋になると日本への台風上陸が増える理由とは? 秋雨前線との相乗効果で豪雨になるかも…

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秋になるとたくさんの台風が日本にやってきます。毎年のことなので慣れているとはいえ油断は禁物です。気象条件次第であっという間に大型で勢力の強い台風に成長し、甚大な被害をもたらすこともあります。台風が夏の終わりから秋にかけて集中的に襲ってくる理由をご存知ですか? 台風について学んで、防災に役立てましょう!

お盆を過ぎると空気が秋めく

夏の終わり、赤いひまわり
引用元:https://pixabay.com/ja/

お盆休みが終わるとなんとなく秋に一歩近づいたような気がしませんか?

特に2019年はお盆休みに大型台風が直撃して以降天気がぐずつくようになり、東京では最高気温が30℃に到達しない日が続いています。冷害や水害は心配ですが、個人的には通勤中に吐き気と目眩に襲われることがなくなったので助かっています。

地球温暖化とヒートアイランド現象のダブルパンチで夏の暑さが酷くなっているため忘れがちですが、本来は、8月下旬になると秋の気配が忍び寄ってくるものです。例えば雪の多い地方では8月20日ごろに夏休みが終わりますし、関西地方では触れるとビリビリするクラゲが大量発生して海遊びが難しくなります。

ちなみに二十四節気では「処暑」(暑さが峠を越す日)が8月23日ごろと設定されています。中国で生まれた区分なので必ずしも日本の気候とぴったり合うわけではありませんが、8月下旬には夏の勢いがピークアウトするという感覚は理解できますね。

さて、夏の雨といえばここ10年ほどで夕立よりゲリラ豪雨が有名になりましたが、夏の終わりから秋にかけて増える雨といえば「台風」です。日本列島に住む限り、夏~秋にやってくる台風を避けることはできません。そして気象条件次第で甚大な被害を受けることもあります。

なぜ秋になると台風が日本にやってくるのでしょうか? 台風が発生する仕組みや台風が大型化しやすい気象条件を知って、豪雨被害に備えましょう。

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台風は一年中発生している

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「台風」や台風の古い呼び名である「野分」は9月および秋の季語とされています。台風が日本に上陸する時期7月~9月に集中していて、6月以前や11月以降に上陸するのは稀です。

日本人にとっては夏~秋が台風シーズンであり、それ以外は「季節外れの台風」という扱いになりますが、地球全体でみると別に台風は季節を限定する気象的現象ではありません。台風自体は一年中発生していて、日本に向かって北上してくるのが夏~秋に限られているだけなのです。

それでは台風(熱帯低気圧)がどのように発生し、発達するのかを見てみましょう。

強力に発達した熱帯低気圧=台風

天気予報でおなじみの「熱帯低気圧が発達しながら北上」「台風の威力が弱まり、××沖で温帯低気圧に変化」というフレーズ。誰しも一度は耳にしたことがあるはずです。

台風とは、太平洋の北西部で発生した熱帯低気圧のうち、低気圧内の最大風速が17m/s(秒速17メートル)を超えたものをさします。つまり台風と熱帯低気圧はまったく同じもので、特に強力で強い雨風をもたらすものを特別に「台風」と区別して読んでいるのです。

熱帯低気圧は、熱帯~亜熱帯の海上(緯度10~15度)で発生する現象です。積乱雲が凄まじい速度でグルグルと渦を巻く特徴があります。ちなみに渦巻きの方向は、北半球が反時計回り、南半球が時計回りです。

発生場所で呼び名は変わる

熱帯低気圧は海上ならどこでも発生する可能性があります。発生した場所によって発達後の呼び名は以下の通りに変わります。

台風(タイフーン)…北西太平洋
ハリケーン…大西洋・北東太平洋
サイクロン…南太平洋・インド洋

名前こそ違いますが、これらはおおむね同じ現象です。日本を含むアジア圏を襲うのが「台風(タイフーン)」、アメリカなどを襲うのが「ハリケーン」、インドやオーストラリアなどを襲うのが「サイクロン」です。

ちなみにこれらの区分は気象の観測範囲をもとに人間が勝手に決めたものなので、越境して呼び名が変わる熱帯低気圧もしばしばあります。日本付近では「ハリケーン」→「台風」という風に、日付変更線の向こう側から越境してくるものが多いです(越境台風)。逆に日本より西にあるインド洋からサイクロンが越境してくることはまずありません。

海上で大量の水蒸気を吸って発達する

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低気圧というのは文字通り「周囲より気圧が低い」部分をさします。

低気圧ができる原因は様々ですが、「熱帯低気圧」の場合は、温まった海水面から大量の水蒸気が蒸発することで低気圧が発生します。地球の重力が空気を引っ張る力(気圧)より、海水が蒸発していく力(上昇気流)の方が強いので気圧が下がるのです。

実は、いまだに熱帯低気圧の仕組みは完全には解明されていません。おそらく大量の水蒸気が上空に立ち上ることで積乱雲が一気に高く成長し、上空を蛇行しながら流れている貿易風(西向きの風)に触れることで渦巻きが発生し、次第に熱帯低気圧の形になっていくのではないかと考えられています。

気化熱を奪うと体温が下がるってどういうこと? 汗の乾燥がもたらす効果とは」の記事で、水分が蒸発(気化)するためには熱が必要で、体温から気化熱を調達するから汗が乾くと体温が下がるという仕組みを解説しました。

熱帯低気圧は温かい海水が蒸発することで発生します。海水は蒸発するために周囲の空気から熱を奪っています。熱を奪ってできた水蒸気は当然熱を持っています。空気は温かいほど軽くなるので強力な上昇気流となって上空に到達し、水蒸気は急速に冷えて積乱雲になります。水蒸気が冷えるときに空気に熱が移動するのでさらに激しい上昇気流(低気圧)が生まれます。

積乱雲が発達すると低気圧も発達し、低気圧が発達すると積乱雲も発達します。夏~秋は太平洋の海水が充分に温まっているので、積乱雲のもととなる水蒸気は無限にあると言っても過言ではありません。熱帯低気圧は海上でたっぷり水分補給して、やがて台風レベルにまで発達します。

夏の日本は高気圧に守られている

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「台風」のもととなる熱帯低気圧は、太平洋北西部の北緯10~15度付近で発生します。フィリピン沖を日付変更線方向に進んだあたりが多発地帯です。発生した熱帯低気圧はいったん貿易風によって西に向かって流されつつ北上します。

北緯30度を超えると貿易風に変わって偏西風という東向きの風が吹き始め、今度は東に流されつつ北上を続けます。日本列島の緯度は北緯20~46度と縦長で、東京は北緯36度です。

熱帯低気圧や台風は海水の温度が高くないと勢力を維持できないので、日本にまで北上してくるのは夏や秋だけなのです。

また皆さんご存知のことではありますが、北上してきた台風が必ずしもすべて日本に上陸するわけではありません。台湾や朝鮮半島、中国に向かっていく台風もあれば、沖縄から北海道まで日本列島を縦断するような台風もあります。また台風が上陸しなくても、渦巻きの端っこ(強風域)がかするだけで甚大な被害を受けることもあります。

太平洋高気圧のせいで夏が暑い! でも台風をガードしてくれる

日本の夏は非常に高温多湿なことで有名です。北緯が同程度の国々と比較すると、湿度が異常に高いので実際の気温以上に過ごしにくくなります。

なぜここまで湿気が高くなるかというと、夏になると日本の上空に「太平洋高気圧」が張り出してくるからです。

高気圧は、低気圧とは逆に、周囲より気圧が高い場所をさします。低気圧は上昇気流によって空気が上空へ向かうため気圧が下がります。同様に高気圧は下降気流で上空の空気が地上に向かって下りてくるので気圧が高まります。

太平洋高気圧とは文字通り太平洋上で発生した高気圧のことです。太平洋高気圧自体は乾燥しているのですが、周辺部は湿っています。日本の夏がサウナ状態になるのは太平洋高気圧が暖かくて湿った空気を運んでくるせいです。

しかし悪いことばかりでもありません。熱帯低気圧は太平洋で水蒸気をどんどん吸って北上しつつ発達するのですが、太平洋高気圧と比べると力負けします。そのため台風の進路は太平洋高気圧のフチをなぞるような形になります。

太平洋高気圧が日本上空に張り出している限りは、台風は日本に上陸できません。それでも8月の上陸数がトップなのは、そもそも台風の発生数が段違いに多いのが原因です。またいかな太平洋高気圧といえど常に勢力が強いわけではないので、100%台風を押し返せるわけでもありません。

秋雨前線と台風がぶつかると雨が酷くなる

太平洋高気圧は上空10kmもの高さから下降気流を発生させる、背の高い高気圧です。下降気流は太平洋の水面にぶつかり、水蒸気を含んだ温かい空気を周辺に吹き飛ばします。太平洋高気圧の周辺部で暖かく湿った風が吹くのはそのためです。

夏に突然夕立が降るのは、太平洋高気圧の性質そのものが原因です。さらに上空10kmから冷たい空気が下りてくるので、ちょっとしたきっかけで雨雲が大量にできます。

8月後半に入り、太平洋高気圧が弱まると秋雨前線(寒冷前線)が北から南下してきます。晩夏~初秋の秋雨前線はせいぜい数日間停滞する程度ですが、そこに台風が北上してくると話は別です。

本来台風は「熱帯低気圧」なので、海から上陸すると水蒸気が吸い上げられなくなって急激に弱まります。勢力が弱まると移動速度も速くなるので、台風の被害は軽減されます。

しかし秋雨前線とぶつかると、台風は前に進めなくなります。陸上にあるので「台風」としてのパワーは弱まりますが、代わりに秋雨前線が台風の刺激を受けて強力になり、豪雨を降らせます。2019年8月後半は、典型的な例といえます。注意が必要です。

週間天気もチェックして、気象庁や自治体の指示に従おう

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「台風」の元である「熱帯低気圧」は年中発生していて、海水温が上昇する7月~9月に日本付近まで北上してくることがわかりました。地球の地軸が傾いていて、日本に春夏秋冬がある限り、台風を避けることは不可能です。

そして高温多湿で私たちを苦しめる太平洋高気圧こそが、台風から日本列島を守ってくれています。しかし太平洋高気圧が弱まったタイミングと、秋雨前線と台風がやってくるタイミングが合致してしまうと豪雨になります。

つまり台風がきっかけの気象災害は防ぐことができません。しかし、日本は高性能な気象衛星を打ち上げていて、常に広い範囲で天候の変化を観測しています。台風と秋雨前線の接触などは事前に予測できます。

豪雨は止められませんが、豪雨によって被害を受けないために準備したり避難したりすることは可能です。私たちにできるのは、今日の天気だけでなく週間天気もチェックし、気象庁や自治体から警告が出された場合は指示に従うことです。

避難しても大した被害が出ないことも確かにあるでしょう。しかし「どうせ大したことない」と高をくくって逃げ遅れるよりも、避難して「大したことなくてよかった」と言う方がずっといいですよね。皆さんもお住まいの地域の避難場所やハザードマップをチェックして、用心を怠らないようにしてくださいね。

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VENGA編集部
VENGA編集部です。コンプレックスを持つ女性に寄り添う記事をお届けします。

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